• 1月 22, 2024

Haemophilus influenzae

駒込病院で侵襲性インフルエンザ菌感染症(invasive Haemophilus influenzae disease)を治療しました。

呼吸不全+敗血症性ショックで入院した症例で、血液培養でグラム陰性桿菌(GNR)が発育したと検査室から報告を受けました。
顕微鏡で見るとGNRではあるものの、かなり小型。
尿でもGNRが見えましたが、こちらは腸内細菌科細菌の類だろうという見た目。
痰には目を凝らすとわずかに小型のGNRがいるようないないような…あまりはっきりしません。病勢からは敗血症の原因は肺炎であろうことは明白であったので、血液培養の小型GNRはインフルエンザ桿菌と判断し抗菌薬を選択しました。

数日後血液培養はインフルエンザ桿菌と判明し、痰培養も一致しました。
研修医の先生の体液管理が良く、患者さんは一命を取りとめています。

さて、インフルエンザ菌感染症ですが冬に流行するインフルエンザとは別物です。
Haemophilus influenzaeという細菌感染で起こる呼吸器感染症で、まれに血液や髄液から菌が検出されることがあり、その場合は届け出対象となっています。

「ヒブワクチン」と聞けば特に保護者の方はピンとくる方も多いでしょう。
ヒブ=Hib(Haemophilus influenzae typeb)のことです。
2013年から小児で予防接種が定期化され、小児感染者は激減しています。

近年の問題は深刻な抗菌薬耐性化です。
詳細は割愛しますが、BLNAR, BLPAR, BLPACRなど耐性化機序により分類されます。高齢者の方の肺炎は誤嚥性肺炎と考えてアンピシリン・スルバクタムを使用しがちですが、BLNAR, BLPACRには無効です。したがって背景に誤嚥がなさそうな方やグラム染色で誤嚥性肺炎らしい所見でない場合は、抗菌薬選択を検討せねばなりません。

グラム染色を見て治療に思いをはせる、内科診療の醍醐味です。

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