• 2月 24, 2024

破傷風とワクチン

破傷風。改めて見るとすごい名前の病気です。日本語名の由来は調べてもわかりませんでした。
英語ではTetanusと書きますが、土や動物の口腔内にいる破傷風菌(C. tetani)に由来します。
菌が土壌や動物から傷口を介して人体に入ると、毒素(テタノスパスミン)が産生され神経を侵します。典型な臨床経過は以下のように進行します。
「農作業中で足の末端を負傷→絆創膏で様子見→1~2週間後口があけにくい、手が硬直→痙攣」
(チャールズ・ベル氏が破傷風患者の絵を描いています)
さらにこの病気の恐ろしさは自律神経症状にあります。筆者(院長)も1例だけ見たことがありますが、自律神経の異常により不整脈や低血圧が頻発し、発症したらICUでの集中管理が必要です。
破傷風を発症した場合の死亡率は30-50%程度とされ、COVID19の死亡率が0.1%(2023年07月時点)と考えるとかなり死亡率が高いです。

この病気は海外に比べて日本で多く発症しています。日本に破傷風菌が多いわけではなく、その理由は予防接種にあります。破傷風に対するワクチンは子供が受ける4種混合や11歳前後で摂取するDTワクチンに含まれていますが、定期接種に破傷風が加わったのは1968年以降です。
したがって、それ以前に出生された方には破傷風に対する基礎免疫がないわけです。
また、ワクチンで獲得できる破傷風に対する免疫は10年程度で減衰すると考えられ、最終接種の11歳から10年以上経過している方も免疫が低下しています。
飛沫感染や空気感染をする感染症であれば感染した人と接することによるブースター効果も期待できますが、破傷風はそういった効果は期待できません。
破傷風に対する免疫は以下の2点の方法で上げることができます。

①外傷時に破傷風トキソイドを接種する
 →外傷を見てくれた医師にお願いしましょう(保険)
 
②積極的に破傷風混合ワクチンを接種する
 →DTワクチンもしくは百日咳予防込みで3種混合を打つ(自費)

特に農畜産業に従事する方、料理人の方、自衛隊や消防など災害救助を行う方は推奨です。
筆者(院長)は子供と泥んこ遊びをすることが増えたタイミングで接種しました。

最後に復習です。
・1968年以前の方は破傷風ワクチン未接種である
・20歳以上で破傷風免疫は減弱する
・土壌によく触れる方は接種推奨
・傷を負ってしまった場合は破傷風ワクチン歴を確認する

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